文章を書くための心構え

はじめに

文章にこだわり始めると一生完成しません(本質情報)。一定程度の完成度で妥協することが大事です。

①「基本的に文章は完成しないものである」というこの世の真理を受け入れよう

②文章を書く前に自分が達成するべき完成度をあらかじめ決めておこう

文章は完成しない

私は毎月50000字程度の文字を書きます。自分用の日記を書いたり、趣味の文章を某サイトで全世界に公開したり、お仕事の文章を嫌々書いたりしてます。今回は自分が文章に対してどう向き合っているかについて紹介します。

文章を執筆するうえで、一番最初に読まれるであろう部分を書く時が一番神経を使います。「ツカミ」にあたる部分の内容がスカスカだと、そのあとの本編で観客を惹きこむことは難しくなります。そのため、自分の自己紹介やツカミに当たる部分の文章では、自分の出せる最大限のアウトプットを出さなきゃいけないと思うわけです。ここに全神経を集中させるべきだと考えています。

良いアウトプットを出すには、時間が不可欠です。「一度書いた文章を寝かせてしばらくしてから修正をかける」作業を繰り返せば、アウトプットの質は上がっていきます。とりあえず書いたドラフトをしばらく寝かせ、忘れた頃にもう一度修正するとよりよいものができます。これは紛れもない事実です。

ただ、こうした作業が「修正」という言葉の表す意味の射程に入っていれば話は早いのですが、残念ながらそんなことはありません。内実は「スクラップ&ビルド」です。過去の自分が書いている文章を読み返していると、あくなき探求が始まってしまいます。寝かせた時間が長いほど自分の中の要求水準が肥大化していき、「もっといい状態のものを出したい」という思いがむくむくと膨れ上がっていきます。文章に求められる完成度は、寝かせた時間に比例して大きくなってしまいます。

急に書き足したい事が思い浮かびます。より良い言い回しを思い付きます。前後の段落を入れ替えたくなります。文章の一部に変更が加わると、文章全体の収まりが悪くなります。文の構成を大きく変更する必要が生じます。場合によっては書いたドラフトを全て没にして一から再構成を始める場合もあります。

どれだけ修正しても、自分の中の肥大した要求水準を満たさないのはよくある話です。こうなると、おしまいです。どれだけ絞り出しても筆が進まなくなってしまいます。理想と現実の乖離に耐えきることができなくなります。自分の才能の無さを恨み、この世に絶望し、文章を書くことに対するやる気がガリガリ削られていきます。こんな狂った世界を変えなければならない。とりあえずインドに行きナマステ川でガンジスするしか残された道はありません。

このように、「よい文章を書くためには時間を置くことが必要である」一方、「時間を置けば置くほど文章に対する自分の中の要求水準は高まり、それに応えるためのコストは膨れ上がり、自分の能力以上のアウトプットが必要になる」というとんでもない欠陥構造が存在します。

したがって、基本的に文章というのは「完成しないもの」なのです。これが自然の摂理です。

完成度をあらかじめ決めておく

というわけで最近の私は、自分が書く文章の到達目標を「2割完成」「6割完成」「8割完成」の3つに分類しています。

自分用の日記を書く際には、「2割完成」に留めておいてよいのです。とりあえずざっと書いただけでOK。実質箇条書きみたいなものです。日本語が崩壊していてもOK。言いたい事の順番が多少前後していても目を瞑る。人に読ませる文章ではないので自分が後から読んでこの時こういうことを言いたかったんだなあと思い出せればそれでよいのです。なんなら思いっきり[記号を使う]ことで無理やり可読性を高めるなんて荒業を使っても問題ないのです。後で気が向いたらブラッシュアップしたらいいのです。どうせ気が向くことなんてないのです。語尾が連続しても気にしない。

自分の趣味で外に公表する文章は「6割完成」を目指しています。可読性があり、変なところで詰まることなく読めれば問題ありません。それぞれの文・段落の間の論理構成や接続語には多少は気を遣いますが、レトリックや文章全体の流れのようなものを大きく変更することはしません。また、「あとから読み返す」ことは基本的にしません。そんなことをしたら、要求水準が上がって話がややこしくなってしまいます。

自分が仕事で出す文章や、趣味だけど力を入れたい文章は「8割完成」をゴールに設定しています。先述した通り文章は完成しない性質を持っています。どこかで折り合いをつけないと一生完成せず、世に放たれることはないのです。いい塩梅で妥協しましょう。後から読み返してブラッシュアップする工程は多くて2回までに留めておきましょう。

たまに「10割完成」を目指す本気の文章を目指すこともあります。これはかなりの大技になりますので基本的にお勧めしません。やるとしても、年に数回程度に留めておきましょう。繰り返しになりますが、完璧を求める態度で文章に向き合っても完成することはありません。しかしその一方、時間という概念は決まった速度で流れていきます。時間の性質を悪用したのが「締め切り」という制度です。こだわりの追求にストップをかけてくれる歯止め役としてデカい面をしています。この「締め切り」のおかげで文章の洗練をどこかで手打ちにしないといけないようになっていますので上手に使いましょう。

ちなみに、締め切りを設定するのは血の通った人間です。人間にはhomeostasisという機能があるため、多少のイレギュラーに対しては適応することができます。人類皆兄弟です。おいしい食べ物やお酒を渡せば、彼らのhomeostasisを最大限に発揮してくれるでしょう。締め切りが近づいてきたら「真の締め切り」「これより後だとマジでやばい日」をこっそり聞き出すようにしましょう。

なお、締め切りがない文章を「10割完成」で仕上げようとするのは愚行です。絶対に完成しません。

まとめ

というわけで今日は文章を書く時の基本姿勢について紹介しました。

①「基本的に文章は完成しないものである」というこの世の真理を受け入れよう

②文章を書く前に自分が達成するべき完成度をあらかじめ決めて折り合いをつけよう

この2つを意識すれば、それなりのペースで文章を書くことができるようになるんじゃないかなと思います。これは文章以外のものにも当てはまると思うので適宜応用してみてください。

参考になる書籍

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